占領する側、される側
編集者Fです。
7月の中公文庫プレミアムは、『マッカーサー大戦回顧録』と住本利男著『占領秘録』の2冊です。
これから8月15日にかけ、日本の出版界メディア界は年に一度の「戦争を振り返る季節」。来年は終戦から70年ということで、いろいろなイベントがあるものと思われます。中公文庫プレミアムでも、戦前日本のあり方や、戦争そのもの、さらには戦後日本の歩みを考えるためのヒントになる本を刊行していこうと現在鋭意作業中ですが、今回の2冊は、いわばその皮切りとなる2冊です。
現在の日本の政治や外交のあり方を見ていて痛感するのは、戦争が終わって70年、よきにつけ悪しきにつけ、まだまだ日本は、占領期に確立された国際秩序の枠組みから自由ではないということです。ことに現在良好とは言えない日中関係や日韓関係、さらにはアメリカが加わった東アジア秩序のあり方を見ていると、本当にそう痛感させられることが多い。
そこで懸念されることは、国際社会でどうしても避けられない軋轢が生む悪感情です。戦前の日本の排外主義的気分がやがてどんな歴史を導き出したか。それが敗戦という結果を招いたことで、日本社会がどう変わり、日本国の国際社会におけるあり方がどう位置づけられたか、そうした歴史を知らないまま、感情論だけが横行しかねない今の風潮に違和感を覚えずにはいられません。
『マッカーサー大戦回顧録』は、ご存じ1945年から6年にわたって日本占領の最高責任者であったダグラス・マッカーサー将軍の『回想記』から、日米開戦から占領までの部分を抜き出した書です。
一方の『終戦秘録』は、毎日新聞の政治部記者だった著者が、当時、日本側にあってアメリカの占領政策と関わった人々の証言をもとに綴ったドキュメント。
いわば、占領した側の手記と、占領された側の証言であり、この2冊を合わせ読むことで、日本が占領されていた日々のあり方を立体的・複合的に読み取ることができるわけです。
両書とも解説は、占領史の専門家である増田弘先生にお願いしました。この『マッカーサー大戦回顧録』と『占領秘録』だけでなく、占領期の貴重な資料となる様々な書を引用し、両書と比較検討することで、より深く、この時代を知る手がかりとなるはずです。
なお、以下の弊社刊行物も合わせてお読み頂ければ幸いです。