中公文庫プレミアム 編集部だより

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アメリカ、キューバと国交正常化

編集者Fです。

 

今朝の朝刊で報じられましたとおり、アメリカがキューバと国交正常化に向かって動き始めました。

 


米・オバマ大統領、キューバとの国交正常化に向け協議開始へ(14/12/18) - YouTube

 

ご存じのとおりアメリカは1961年以来、キューバと国交を断絶していました。その年の4月、2年前のキューバ革命で指導者の地位についたカストロ首相は社会主義を宣言、62年にはソ連キューバに核ミサイルを搬入、ミサイル基地建設を始めたことをきっかけにキューバ危機が起こったわけです。

 

キューバ危機の顛末は、中公文庫プレミアムが第1弾として刊行したロバート・ケネディ著『13日間 キューバ危機回顧録』に詳しく綴られています。当時は第三次世界大戦の引き金になるのではないかと危惧された大事件でしたが、ケネディ大統領とフルシチョフ首相、二人の指導者の叡智によって救われたあたりは、是非、お読みいただければと存じます。 

 

ところで、これに先だって今月9日、アメリカのCIAが水責めなどの非人道的な拷問を行っていたというレポートが議会に提出され、12日にはCIA長官も事実であることを認める発言をしました。


水責めや模擬処刑も CIA拷問の実態を公表 - YouTube

 

これ以前にも、アメリカがキューバ内にあるグアンタナモ収容所で、アルカイダと関係あるとされた容疑者に拷問を行っていたことはある程度明らかになっていました。グアンタナモとは、1898年の米西戦争(スペイン植民地だったキューバのスペイン軍とアメリカ軍との間に起こった戦い)で米軍が占領し、その後独立したキューバ政府(親米政権)がアメリカの永久租借を認めた地です。1959年のキューバ革命以降もアメリカが実質支配していながら、アメリカ国内法が及ばない地なので、違法な拷問を行っていたと言われていました。

 

ブッシュ政権時代に行われたとされるCIAの拷問が報告された背景には、現在の民主党政権と共和党政権の対立があると報道されていましたが、今朝のアメリカとキューバの国交正常化を聞いてちょっと連想したのは、1961年に起こったピッグス湾事件でした。

アイゼンハワー政権時代にたてられた、アメリカの支援で亡命キューバ人部隊がキューバに上陸し、革命政権を打倒しようとした作戦で、CIAが深く関与したとされています。作戦はアイゼンハワーの後を襲ったケネディ政権に引き継がれ、発足したばかりのケネディ大統領はこれを承認するのですが、無惨な失敗に終わってしまった。キューバ社会主義勢力に入ることを促した形となった事件ですが、その後もCIAは、幾度もカストロ暗殺を試みたとされています。

 

今回、オバマ大統領は、カストロ議長と電話で会談したという事で、実に半世紀以上に及ぶ対立に終止符を打つ劇的な外交と言えるでしょう。その直前に、カストロを打倒しようと画策していた過去を持つCIAの非人道的行為が暴露された事が関係しているかどうかは知りませんが、因縁めいたものを感じた次第です。