いまどき社会主義?・・・・・なんておっしゃらずに
編集者Fです。
10月刊の中公文庫プレミアムは、ジョン・ダワー『吉田茂とその時代』(上下)、毛沢東『抗日遊撃戦争論』そしてヴォー・グエン・ザップ『人民の戦争・人民の軍隊』というラインナップでしたが、一応、この3書(4冊)を並べたのは、意図があります。
早めに答えを言っちゃいますが、「第二次世界大戦後、国の体制が変わったアジアの国家で指導的役割を果たした人物についての本」です。(ちなみに吉田茂〈大日本帝国→日本国〉、毛沢東〈中華民国→中華人民共和国〉、ヴォー・グエン・ザップ〈フランス領インドシナ→ヴェトナム社会主義人民共和国〉。とはいえ、吉田茂は有名な〈反共〉政治家でしたので、ひょっとしたら、毛嫌いしていた共産主義者たちと一緒に並べられるのは不本意かもしれません。
ところで、毛沢東とヴォー・グエン・ザップの著書を並べた事には、もう一つ意図があります。というのは、冷戦体制が崩壊した後、多くの社会主義国は体制の崩壊を余儀なくされたのですが、中国とベトナムは、依然として社会主義の看板をおろすことなく存続しているわけです。それでいて経済的には資本主義を導入し、中国などは今や世界第2位(名目GDPドル建て、2013年)の堂々たる経済大国です。
とはいえ、現在の中国やベトナムを理解する上で、毛沢東思想や、ヴォー・グエン・ザップの戦術論が、どのくらい役立つか疑問を持たれる方もいるでしょう。しかしながら、かつては「民族独立闘争」という名で呼ばれた「国家以外の勢力による現状変更を目指す武力行使」は続いていますし、毛沢東思想を信奉する武装勢力は少なくない(たとえば、2万人と言われる「人民解放軍」を擁して武力闘争を続けていたネパール共産党統一毛沢東主義派は、2011年に議会で合法的に政権の座に就いています)。
毛沢東が訴えた「革命は、客を招いてごちそうすることでもなければ、文章をものすることでもなく、絵をかいたり、刺繍をしたりすることでもない。そんな風雅なものではありえないのである。革命は、暴動であり、一つの階級が他の階級を打倒する激烈な行動である」という言葉は(多少文言を入れ替えれば)、21世紀の今日でも少なからぬ人々の行動原理として生きていると思います。
人民の戦争・人民の軍隊 - ヴェトナム人民軍の戦略・戦術 (中公文庫)
- 作者: ヴォー・グエン・ザップ,眞保潤一郎,三宅蕗子
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2014/10/23
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (1件) を見る