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中公文庫プレミアム 編集部だより

永遠に読み継がれるべき名著を、新たな装いと詳しい解説つきで! 「中公文庫プレミアム」を中心に様々な情報を発信していきます!

映像のなかの吉田茂

編集者Fです。

 

10月25日刊のジョン・ダワー著『吉田茂とその時代』(上下)を皮切りに、中公文庫プレミアムでは、来年にかけて「吉田茂シリーズ」(公式名称ではありません)が始まります。11月から来年1月にかけて毎月、吉田茂池田勇人佐藤栄作ら「吉田学校の弟子たち」に語った回想録『回想十年』(上中下)が、そして来年春には、吉田が引退後に綴ったエッセイや政治評論をまとめた『大磯随想・世界と日本』を刊行予定。

 

 

吉田茂とその時代(上) (中公文庫)

吉田茂とその時代(上) (中公文庫)

 

  解説は、『吉田茂とその時代』と同じく、学習院大学井上寿一学長にお願いしております。近代史の権威であり、精力的に著書を発表されている井上先生の解説は、「シリーズ」を通して読んでいただければ、それだけで吉田茂にまつわる名評論となるのではないかと、期待しております。

吉田茂と昭和史 (講談社現代新書)

吉田茂と昭和史 (講談社現代新書)

 

 

    

ところで、吉田茂といえば、太平洋戦争後、焼け野原となった日本において長期政権を担った政治家として知られているわけですが、一方で、ぶら下がり質問の新聞記者に水をぶっかけたり、野党議員の質問に対して「馬鹿野郎」と言い返してついに議会解散に追い込まれたり(「バカヤロー解散」)、エピソードの多い人物でした。保守的な「ワンマン」宰相という評価の一方で、信念をもってGHQとわたりあい戦後日本の基礎を作り上げた偉人という、二つのイメージで語られることが多いのではないでしょうか。

 

こうした吉田茂の両面を描いた映画が、『小説・吉田学校』(1983年、森谷司郎監督)でした。吉田を演じるのは森繁久彌(当時、70歳)。癇癪持ちで、不機嫌になると子供のように我が侭になるけれども、戦後日本の平和主義にはかたくなな信念を持ち再軍備に最後まで抵抗した(このあたり、議論の余地はありそうですが)宰相を、森繁久彌がホームドラマでたびたび演じた「愛すべき頑固オヤジ」な味わいをにじませつつ演じています。

共演も、芦田伸介鳩山一郎)、梅宮辰男(河野一郎)、西郷輝彦田中角栄)、仲谷昇岸信介)、小沢栄太郎(松野鶴平)、勝野洋中曽根康弘)、橋爪功福田赳夫)、角野卓造宮沢喜一)といった名優たちが、当時の名だたる政治家を演じています(ちなみにここで挙げた政治家は、現役国会議員の祖先)。

 


映画「小説吉田学校」 予告編 - YouTube

 

他に吉田茂が登場する映像作品と言いますと、ジェームズ三木さんが、新憲法制定のプロセスを歴史に忠実に再現したドラマ『憲法はまだか』(1996年放映、NHK)があります。主人公は津川雅彦演じる松本烝治(憲法制定担当大臣、松本委員会を主宰し憲法試案を作成)で、別の形で帝国憲法改正に名乗りをあげた近衛文麿江守徹)との確執がドラマの主軸でしたが、当然、日本政府側として吉田茂も登場します。演じるは鈴木瑞穂。(↓は、吉田茂外相、松本烝治らがGHQのホイットニー民政局長から、新憲法のGHQ草案を提示される場面)

 


場面1 21.2.13 GHQ起草は発布勅語及73条違反 (6-2) - YouTube

 

 

さらに数年前の「白州次郎ブーム」の影響か、同じくNHKで吉田茂が登場するドラマが2本作られました。

伊勢谷友介主演の『白州次郎』(2009年放映)では、吉田茂役は原田芳雄でした。

 


白洲次郎 番宣.mp4 - YouTube

*ちなみに、白州次郎といえば、「マッカーサーを一喝した男」として知られており、このドラマにはそういう場面があったのだそうです。NHKが放送前に流した番宣では、主演の伊勢谷友介が、この場面に違和感を覚え、急遽脚本が修正されたエピソードが紹介されていました。伊勢谷の直感は正しかったかもしれません。白州次郎自身、このエピソードを否定しているのですから。

 

そして2012年には、いまやハリウッドスター渡辺謙吉田茂に扮して主演した『負けて、勝つ 戦後を創った男・吉田茂』(2012年)が放映されました。

 

 

 

このように並べてみますと、これらの作品で描かれた吉田茂は、むしろその時代時代の作り手たちが、吉田茂にどのような思いをこめたかが分かるのではないでしょうか。映像を入り口に、多くの人が戦後史への興味を持ち、その興味を深める助けとして、中公文庫プレミアムでも今後、吉田茂をはじめ、貴重な歴史の証言を世に送り出していきたいと考えております。

 

そういう意味で、個人的に推薦したいのが、NHKが1977~78年にかけて放映した『NHK特集 日本の戦後』(10回シリーズ)です。数年前、CSで全作放映されましたが、終戦の決定、財閥解体、新憲法制定、東京裁判サンフランシスコ講和条約等、戦後の主要なエピソードがドラマ仕立てで再現され、さらに近現代史の専門家の解説も付されています。戦後史の教科書であると同時に、ドラマとしても、なかなかの力作。吉田茂は、全シリーズ通して松村達雄(@『男はつらいよ』2代目おいちゃん役)が演じています。

 

NHK特集 日本の戦後 DVD-BOX

NHK特集 日本の戦後 DVD-BOX

 

 

(以上、敬称略)

(以下、中央公論新社では、↓のような吉田茂関連本も出ています) 

 

日本を決定した百年―附・思出す侭 (中公文庫)

日本を決定した百年―附・思出す侭 (中公文庫)

 

 

  

宰相吉田茂 (中公クラシックス (J31))

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吉田茂という逆説 (中公文庫)

吉田茂という逆説 (中公文庫)